YASARA:重ね合わせ 「Superpose」と「Align」の使用例

2021年12月1日水曜日

【YASARA】

t f B! P L

タンパク質の重ね合わせの方法はいくつかありますが、今回は「Superpose」と「Align」の実行例を紹介します。

この記事では、アデノシンデアミナーゼという酵素タンパク質を例に、ヒト(PDB:3iar)とマウス(PDB:1fkw)のタンパク質の構造を比較してみます。


 1.「Superpose」の使用例 

Superpose」では、選択したObjectの原子間のRMSD(平均二乗偏差)が最小となるように重ね合わせが実行されます。

Align」のように構造アラインメント(立体構造を基にしたアミノ酸残基の対応づけ)を実行しないため、どの原子同士を重ね合わせるかを自分で定義する必要があります。

原子同士の対応は、マッチングオプションで設定できます。

 

<Match option>

Atom name

Atom alternate location indicator

Residue name

Residue number

Molecule name

 

今回はアミノ酸配列が異なるので、「Residue name」は無効にして、「Atom name」と「Residue number」の2つを有効にして実行します。


今回重ね合わせに使用する2つのタンパク質は、残基番号は対応していますがアミノ酸配列と残基数が異なります。

このようにタンパク質の配列が異なる場合は、重ね合わせの対象から側鎖を外し、α炭素もしくはバックボーンのみを重ね合わせの対象にします。

また、残基数が異なっているので、同じ数になるようにサブセットのみを指定します。

 (今回重ね合わせに用いる2つのタンパク質、PDB:3iarPDB:1fkwの残基番号はそれぞれ53644352 なので、残基番号5352を指定します。)

 

 <操作>

1. タンパク質構造の準備

 File Load PDB file from Internet

を選択し、PDB ID3iarを入力しOKボタンをクリックし、ヒトのタンパク質構造を読み込みます。

同様の操作を繰り返し、PDB ID1fkwを入力してマウスのタンパク質構造も読み込みます。

 クリーニング処理を行います。

Edit Cleanall

 不要物が含まれているので削除します。

Edit Delete Atom

を選択し、表示されるダイアログのNegate attributeにチェックをし、Belongs to has 欄でProteinを選択(タンパク質を削除の対象外に設定)してOK

 

2. Superposeの実行

 Analyze Superpose individual objects on selected.. の欄からAtoms

を選択するとダイアログが表示されるので、Name欄からCA(α炭素)、belongs to or has 欄からObj1 を選択し、下の空欄に「Res 5-352」と入力しOKをクリックします。

次の画面もObj1の代わりにObj2を選択して同様に操作し、OKをクリックします。

(一つ目に選択した3iarの構造が1fkwの構造上に重ねられます。)

すると次に、パラメータ設定のダイアログが表示されます。

ここでマッチングオプションを選択できるので、今回は「Atom name」と「Residue number」の2つにチェック(✓)します。

一番下の「Return RMSDs per」では、RMSDを計算する単位を設定できます。例えば、Residueを選択すると、アミノ酸残基毎にRMSD値が出力されます。今回はデフォルト設定(Object)のままOKをクリックし、重ね合わせを実行します。



3. 結果の確認

重ね合わせが実行されると、RMSDがコンソール画面に表示されます。

今回はアミノ酸配列が異なるタンパク質を重ね合わせているので、一致していない残基が警告として表示されています。






 2.Align」の使用例 

Align」では、アルゴリズムを用いてタンパク質の構造アラインメントを行い、重ね合わせを実行します。デフォルトではMUSTANGPP methodが使われます。

 構造アラインメントでは、タンパク質の立体構造に基づいた重ね合わせによる、アミノ酸配列の対応づけをします。

タンパク質の二次構造要素どうしの対応づけをしておおまかに重ね合わせた後、その重ね合わせで接近したアミノ酸残基を再度対応させて修正を繰り返す手法が一般的です。

(配列相同性が高い場合は、最初の重ね合わせは配列アラインメントの結果を基に行われます。)


<操作> 

1.タンパク質構造の準備

先ほどと同様に行います。

 

2. Alignの実行

Analyze Align Objects with MUSTANG

を選択し、ダイアログでSequence欄から3iarを選択しOK1fkwを選択しOKをクリックして実行します。

 

3. 結果の確認

コンソール画面に結果が表示されます。

Superpose」と異なり構造アラインメントに基づいた重ね合わせを行うので、結果にはRMSDに加えて、アラインメントにより対応づけされたアミノ酸配列の一致度なども表示されます。






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