YASARAでは、[View > Style scene > Ribbon & ligand]メニューからリガンドを自動で認識し、各種相互作用を表示することができます。
今回は、さらにタンパク質の表面表示やカット表示を行い、下図のような結合ポケットのイメージ画像を作成してみます。
使用する構造
PDB ID:3eky(アタザナビルとHIVプロテアーゼの共結晶構造)
操作手順
構造の準備
PDB ID: 3ekyの共結晶構造をインターネットからダウンロードし、構造のクリーニング処理を行います。今回使用する構造は、上から2つのMolがレセプター、3つめのMolがリガンドなので、その他の分子を削除します。また、この後の操作をわかりやすくするために分子名を変更しておきます。
- File > Load > PDB file from Internet を選択、PDB ID: 3eky と入力しOK
- Edit > Delete > Molecule を選択、Sequence列で上から4つ目以降を全て選択し、OK
- Edit > Clean > All
- SCENE CONTENT上で「3eky」オブジェクトを左クリック、Name列に分子が階層表示されるので、分子名にマウスカーソルをあわせて右クリック、コンソールメニューを開き、Nameを選択し分子名を変更(レセプター分子(上の2つ)を「Mol R」、リガンド分子(上から3つめ)を「Mol L」に変更)(任意)
相互作用の自動表示
リガンドの相互作用を表示します。冒頭のイメージ画像のように、相互作用をしているアミノ酸残基にラベル(残基名や残基番号など)を付けたい場合は、こちらのブログ記事 を参考に処理するか、この後の手順12のTipsをご覧ください。
- View > Style scene > Ribbon & ligand (またはCartoon & ligand)を選択
Note
この操作では同じオブジェクト内の相互作用しか表示できないので、リガンドとレセプターが別オブジェクトの場合は、Joinコマンド(Edit > Join > Object)を利用して同一オブジェクトにしておく必要があります。
Tips
Effect > Point&line appearance > Radiusから、相互作用の線の太さを調整できます。
タンパク表面の表示
レセプターの表面を表示します。表面の色や透過度は、お好みで調整してみてください。
- View > Show surface of: Molecule を選択、Name列で「R(レセプター)」を選択し、OK
- 次の画面はデフォルト設定のまま、下部の「Set surface color for the entire object」を選択し、外側の色の設定画面に進む
- 外側の色は「White」、Alphaパラメータ(透過度)は「70」に設定し、「Continue with inside color」を選択して内側の色の設定画面に進む
- 内側の色は「White」、Alphaパラメータは「15」に設定しOK
表面の配色や透過度は、View > color > all surface から変更・調整できます。
Style変更
好みでStyleを変更しておきます。この後、相互作用しているアミノ酸残基のみ表示したいので、F1~F3(Ball, Ball&Stick, Stick)のいずれかのStyleに設定しておきます。
(タンパク質がRibbon又はCartoon表示になっていると、アミノ酸を非表示にしても主鎖が表示されたままになってしまうため)
- F3キーを押して全体をStick表示
Tips
Style変更は手順5の後に行うようにします。(手順5を行うと自動でStyleが変更されるため)
周辺のアミノ酸残基の表示
手順5で相互作用の表示を行うと、背後でstyle.mcrプラグインが実行されます(このマクロはplgフォルダに格納されています)。この中の処理で、変数「atomlist」には、相互作用をしているAtomのリストが含まれています。この変数を利用して、相互作用に関与しているアミノ酸残基のみを表示してみます。
- View > Hide atoms > Molecule を選択、Name列で「R(レセプター)」を選択し、OK
- Spaceキーを押してコンソール画面を開き、以下のコマンドを実行
ShowRes Atom (join atomlist)
この変数を利用して、コンソールから以下のコマンドを実行することでこれらのアミノ酸残基にラベルを付与することもできます。
コマンド例:
LabelRes Atom (join atomlist),Format="RESNAME RESNUM",Height=0.5,Color=Black
Tips
ラベルの色やサイズなどのパラメータは、Effects > Label > parameters からも変更できます。
炭素の配色の変更
リガンドとレセプターが同じ色で見にくいので、レセプターの炭素の色を目立たないグレーに変更してみます。ここはお好みで設定してください。
- View > Color > Atom を選択、「Belongs to or has」列で「Element C」を選択し、下部の「and」にチェックを入れ、入力欄に「Mol R」(レセプター分子)と入力しOK
- 「Gray」を選択し、 「Apply unique color」をクリック
Note
リガンドとレセプターを別のオブジェクトに分割(Split)し、View > Color > Carbons per object を選択することで、オブジェクトごとに炭素の色を自動で変更することもできますが、別オブジェクトにすると水素結合が表示できなくなるので注意してください。
カット表示
カットプレーン(CutPlane)を利用して、結合ポケットの内部が見えるように表面をカットします。
Shiftキーを押すと操作対象オブジェクトが切り替わります。(画面右下のObjと書いてあるところから現在の操作対象オブジェクトを確認できます。)左クリックで回転、右クリックを押しながらドラッグするとカット面の位置を調整できます。
表示の調整
見た目を調整していきます。
- View > Lighting でライティングを調整(任意)
デフォルトではタンパク表面に影が落ちてポケット内部が見にくい場合があるので、お好みでライティングを調整してください。
影を消す場合の設定例
- Rotation about X-axis:000(光源を正面に設定)
- Shadow density:000(影をなくす)
- 可視化のON/OFFやHideを使用して見た目を調整
- Cut-Planeや各種相互作用はSCENE CONTENTのVis列をクリックし、表示のON/OFFを切り替え
- 不要なアミノ酸残基は、原子をクリックしてマークした後右クリックし、Hide > Residue を選択して非表示
- 不要なラベルはクリックしてDeleteキーで削除
- Iキーを押してHUDを非表示
画像の保存
- File > Save as > Normal screenshot やRay-traced hires screenshotを選択し、画像を保存
※CutPlaneを設定している場合、Ray-traced hires screenshot を選択して保存すると表示が乱れることがあります。うまく出力できない場合は、2025年6月30日以降のバージョンをインストールしてお試しください。
以上、操作の一例を紹介しました。他にもいろいろな方法があると思いますが、参考になれば幸いです。
(YASARA Structure ver. 25.1.13を使用して作成)