alvaQSARを使ってみました

2025年7月10日木曜日

【alvaQSAR】 【フリーソフト/サービス】

t f B! P L

 定評のある商用分子記述子計算ソフトalvaDescの開発元であるAlvascience srl.社が、化合物の構造を入力するだけで5つのエンドポイントについての予測値を計算し、レポートを出力してくれる無料のウェブサービス alvaQSAR 20257月にローンチしました。https://www.alvascience.com/alva/qsar/

その内容について簡単に見て行きます。

alvaQSARは分子記述子の計算にalvaDescを使い、モデルによる予測にはalvaRunnerを使用したサービスです。OECDの原則に則ったQSARモデルは、REACHのガイドラインに準拠し、AD(適用領域)によるアセスメントが予測の信頼度を高めています。現在、次の5つのエンドポイントに対応しています。

       Biomagnification FactorFish Biomagnification Factor (BMF)

水生食物連鎖を通じた化学物質の魚類生物濃縮係数を予測するためのQSARモデル群。 指標はBMFで、log(BMF)の値を推定。これらのモデルはPBT(難分解性、生物蓄積性、毒性)評価をサポート。

       Daphnia magna LC50Acute Toxicity Daphnia magna LC50 48 hours

オオミジンコ(学名 Daphnia magna)に対する48時間の急性水生毒性を予測するためのQSAR モデル群。指標はLC50 (致死濃度 50%) で、-log(LC50 [mol/L])の値を推定。 これらのモデルは OECD REACH Code: 9.1.1Short-term toxicity testing on invertebrates (preferred species Daphnia))(水生毒性評価)に対応。

       Bioconcentration FactorAquatic Organisms Bioconcentration Factor (BCF)

水生生物が水や餌から直接化学物質を取り込み、体内に蓄積することによる生物濃縮の可能性を予測するためのQSARモデル群。 指標は生物濃縮係数(BCF)で、log(BCF)の値を推定。これらのモデルは、OECD REACH Code: 9.3.2Bioaccumulation in aquatic species, preferably fish)に対応。水生生物種における生物濃縮性の評価に関連し、化学物質の残留性と生物蓄積性の規制評価を支援。

       Ready BiodegradabilityReady Biodegradability in an Aerobic Aqueous Medium (RB)

化学物質がOECDガイドラインに従って容易に生分解されるかどうかを予測するためのQSARモデル群。指標は易生分解性(RB)か易生分解性でない(NRB)かの分類。これらのモデルはREACH Code: 9.2.1.1Ready biodegradability)に対応。RB試験は、28日間にわたる好気性水性媒体中の生物化学的酸素要求量(BOD)を測定し、BOD値が60%より高い化学物質をRBとし、60%より低い化学物質をNRBと分類。

       Fathead minnow LC50Acute Toxicity Fathead minnow (Pimephales promelas) LC50 96 hours

ファットヘッドヒメハヤ(学名 Pimephales promelas)に対する96時間の急性水生毒性を予測するためのQSAR モデル群。指標はLC50(致死濃度50%)で、-log(LC50 [mol/L])の値を推定。これらのモデルは、OECD REACH Code: 9.1.3Short-term toxicity testing on fish)に対応。

尚、現在使用できるエンドポイントは上記の5つですが、開発元によるとこれから増やしていく予定ということです。

REACH: EUの化学物質管理法規制(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicalshttps://www.echa.europa.eu/regulations/reach/legislation

 

alvaQSARを使用するにはユーザ登録が必要です。Alvascience社ウェブページの上にあるalvaQSARのロゴをクリックしページを開け、Signupのボタンをクリックしてユーザ登録の画面に必要事項を入力し送信します。まず「pending approval」のメールが来ますが、その後、承認のメールと共に初期パスワードが送られてきます。

ユーザ登録が完了したら、先ほどクリックしたSignupの隣にあるLoginのボタンを押してログインします。このログインはalvaQSARへのログインというよりは、Alvascience社サイトへのログインとなっているようで、Alvascience社のログインページに遷移しますので、右上にあるalvaQSARのロゴをクリックしてサービス画面に進みます。

“Enter Molecular Structure”という画面が表示されます。

デフォルトでは、上の方にある「Draw a molecule」のスイッチがオンになっています。この状態で、下にあるKetcher(化学構造式の描画ソフト)画面を使って入力したい化学構造を描くことができます。「Enter Your SMILES」のバーからSMILESを使って構造を入力する場合は、Draw ...のスイッチを左にスライドし、オフにした上で入力します。

alvaQSARでは1つの分子しか入力できないため入力はこれで終わりとなり、次はモデル(エンドポイント)の選択となります。先ほど説明したモデルはページの下の方にありますので、1つ選択し、[Predict]ボタンを押すとすぐに予測計算がスタートします。


計算はすぐに終わって結果の画面となります。

左上には入力した構造の2次元描画像が表示されます。

その下には”Molecular Properties”というタイトルの表があり、分子量、原子数の他、エンドポイントに関連しそうな特性値がalvaDescにより計算され表示されています:モル屈折率、極表面積、LogP、溶解度、溶解度のクラス、ファンデルワールス体積、薬らしさの定量的指標(QED)。それぞれの右にあるiマークにマウスオーバーすると、対応するalvaDescの記述子とその説明が表示されます。



右上には”Information”というタイトルで、入力した化合物のSMILES表記・化学式・InChiキーが上半分に、エンドポイント名とその説明、従属変数(目的変数)の情報が下半分にまとめられています。






その下には、予測モデル毎に、モデルの説明(使用アルゴリズムとパラメータ)、予測値、適用範囲(AD)に入っているかどうかの判定が表示されます。BMFでは、M1_KNNというk近傍法による回帰モデルとM2_OLSという多重線形回帰モデル、その2つを組合せたコンセンサスモデルの3つによる予測が行われます。

この結果表示のフォーマットはどのエンドポイントでも同じです。予測結果をレポートとしてダウンロードするには、右上にある[Download Report]のボタンをクリックします。

ダウンロードしたレポートのファイル名は、「alvaQSAR_BMF_2025-07-10_C1OC1CNCC.pdfのようにエンドポイント、日付、入力した構造のSMILESの頭の部分が付けられているので、後で管理しやすいと思います。

 

内容は画面表示されたものに、モデルのバージョンや計算したソフトの情報やリファレンス、ADの詳細情報が付け加えられています。






 また、ダウンロードボタンの横にある[Documentation]ボタンをクリックすると、エンドポイントとモデルの詳細情報が表示されます。


ここで表示されている情報は”QSAR Model Reporting Format (QMRF)”と呼ばれているQSARモデルの詳細情報をまとめたレポートフォーマットのような感じですが、例えば、同じようにREACHに対応したエンドポイントに関する予測モデルVEGAhttps://www.vegahub.eu/portfolio-item/vega-qsar/)で利用できるQMRFよりは簡潔な内容となっています。

alvaQSARでは、残念ながらこの”Documentation”をダウンロードできるようにはなっていませんが、同様の内容はAlvascience社ウェブサイトの”Model studies”ページ以下にも掲載されています。https://www.alvascience.com/model-studies/

表示されたDocumentationの右上にある×をクリックすると計算結果画面に戻ります。ここで上の右側にある[New Prediction]ボタンをクリックすると”Enter Your SMILES”画面に戻ります。

前に入力した分子は保持されていますので、別のエンドポイントを選択し予測計算を実行することができます。また、入力した分子の2次元描画像がKetcher画面に表示されていますので、そこから構造の一部を変更した分子に対して予測計算を実行させることもできます。もちろん、別のSMILESを入力して予測計算を行うこともできます。


【まとめ】

alvaQSARは化合物のSMILES式を入力するだけで、REACH規制に対応したエンドポイントに関する予測モデルを、記述子計算や予測モデルを実行させるアプリなしに使用して予測値を得ることができるウェブサービスです。モデルの詳細な内容や元データは公開されていますので、追検証することも可能です。現時点では、入力できる分子は1つ、使用出来るエンドポイントは5つという制約がありますが、信頼度と透明性が高い予測モデルを無料で簡単に使えるというメリットは大きいと思われます。









code-prettify

このブログを検索

ページビューの合計

人気の投稿

QooQ